バレエダンサー 西島千博 vol.3

日本とフランスの芸術の捉え方の差異
日本人のトップバレエダンサーで長年パリに渡っていらっしゃった僕の恩師でもある酒井達男先生に『日本は殺伐としていてあまり芸術に対して意識が届きにくい社会だ』と言われたことがあります。
ちょうどバブルの頃でしたが、競争社会で心のゆとりを持てず芸術に安らぎを求めたり楽しむといった意識になかなかいきづらい環境だったと思います。
一日のうちで仕事に意識がいっている人の方がいっている人の方が多くてリラックスしている人の方が少ないのが残念ながら日本なんですね。フランスでは人々が芸術自体を必要としている文化を強く感じます。
芸術に人の心を癒すエネルギーがあり、成長するための要素がたくさん含まれているという認識が欧米の方が強いですね。
海外、特に欧米ではバケーションの制度というか習慣が定着していて夏休みは一ヶ月必ず休むという期間が保証されていますが、日本だとそんなに悠長なことは言えない環境でどうしても仕事優先の生活サイクルで暮らしています。休暇を楽しむ時間が確保されなければ、芸術を楽しむ時間も確保できません。
人間の本質を考えるとやはり仕事ももちらん大切ですが休みを取って心のゆとりのある時間を作るということが非常に大切だと思いますね。なかなか日本人は仕事と休暇のバランスの取り方が上手くないと思います。外国人は生活のバランスを割り切っていて、例えば仕事の定時きっかりでその日の仕事は終わり、例え仕事が終わっていなくても退社してそこから食事に出かけるなどみんなで楽しく時間を過ごすことを大切にするお国柄です。とてもメリハリがあっていいと思います。


(AIVA Vol.3 保存版より転用)

次回、テレビの世界から劇場へ