西島千博はバレエを高尚なものとして留まらせておくものではなく、
より多くの人に親しみやすいものにしようと活動を続けるバレエダンサーである。
他ジャンルとバレエのコラボレーションの舞台プロデュース、テレビやモデルとして
幅広く活動する一方、クラシックバレエダンサーとしてのベースをしっかりと守り続ける彼にフランス留学での体験、バレエへの向き合い方、他ジャンルに及ぶ活動について話を聞いた。
フランスへの憧れ、18歳での渡仏
物心がつくとバレエに対しての意識も高まり、憧れるダンサーも現れるようになりました。僕が憧れていたのはパリ、オペラ座の当時の大スター、パトリック・デュポンというバレエダンサーです。彼はクラシックバレエでも主役を踊っていましたが、バレエ以外の分野でも活躍していました。中学生くらいの時は、彼のプライベートビデオを擦り切れるくらい観ていました。彼は踊りだけでなく歌ったりテレビに出たり、実に幅広い活動をしていましたね。日本で言えばアイドル的存在というか、プリンシパルダンサーであると同時に国民的アイドルのような存在だったんですね。バレエ大国なので国全体で彼をスターダムに押し上げたという感じでしょうか、自分も彼のような芸術家になれたらいいなと思い始めていました。
18歳でフランスに留学したのですが、憧れのパトリック・デュポンからレッスンを受ける事もでき夢のようでしたね。一番刺激を受けやすい年頃で受ける影響が濃いというかパリの空気を直に肌で感じることができたと思います。パリは歴史を大切にする意識がすごく高い国である一方で新しいものを育てようという意識も高く、バレエやクラッシックなどの歴史あるものを大切にし、同じように現代アートやコンテンポラリーも重視しています。古くからの芸術と新しい芸術の融合性がちょうどいいバランスで成り立っているように感じました。歴史を大切にしながらも新しいものも発掘していくというような柔軟性があって魅力的でしたね。
フランスで暮らしているうちに日本でも古くからあるものも大事にしながら新しい文化の発信ができる土壌を自分が作る事ができるんじゃないかと思いました。一方で欧米と日本の芸術に対する意識のちがいというものを強く感じました。フランスは芸術の国とよく言われますが、芸術が決して特別なものではなく日常の生活に溶け込んでいます。
日本人は芸術を生活の中に取り入れにくいもの、高尚で理解しづらいものだと思っている人がいまだに多いですが、芸術が生活の中に根付いているフランスで暮らしているうちに芸術が特別なものだという日本での認識がまず違うのではないかと思い、帰国した時にどうすればより多くの日本人が芸術に興味を持ってくれるのだろうと試行錯誤しました。
(AIVA Vol.3 保存版より転用)
次回、日本とフランスの芸術の捉え方の差異
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